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2011年2月25日 (金)

2011.0219.20 奥多摩Deep West(雲取、飛龍、丹波天平)3

雲取山避難小屋にて。

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5:10に起床。無風。辺りはまだ暗く人の動く気配も無い。眠れない事が多いので何時でもテン場では早起き一番乗りだ。シッパーを開けて顔をずり出し左右のテントに目をやる。他のテントから起きている気配が無い事にがっかりしながらもキャンドルランタンに火を入れる。小さな炎がシェルター内を暖かく照らす。ここ最近始めた新しい朝の作法だ。それからポケットからライターを探り出してトランギアを手元に引き寄せる。1/2oz程度のアルコールを注ぎ火を入れる。雪面が音を吸収するのか今朝の燃焼音は控えめだ。コーヒーを淹れて少しの間、しばし呆ける。

今日はtiyoさん達と歩くので出発時間の7時に遅れないように早めに準備をする。今朝の朝食は蟹粥。手持ちの温かい食事はこれで最後。あとはソイジョイ2本、1本満足1本、ブラックサンダーが3つ。あとトレイルミックスが1袋。アルコールの残りは2oz丁度。400ccを確実にあと2回沸かす事が出来る量だ。水はプラティパス1Lとテルモスの400cc程度の白湯で全部。空のナルゲン・カンテーンに残っている200cc程度の氷は捨てずにそのままバックパックの底に仕舞いエマージェンシー用とする。食料も燃料も水も計算通り。完璧だ。装備の確認をしていると外が明るくなってきたのでShangri-la1の中の物を外に出して撤収作業を開始する。

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Mountain HardwearのX-Stake15cm。緩む事無く一晩耐えてくれた。

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tiyoさん達に朝のご挨拶。

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今日の行程の地図に目を落とす。三条ダルミを抜けて北天ノタルを越える。そして飛龍権現から南の尾根を下りサオラ峠、丹波天平と歩き通す。山と高原地図の参考タイムで約7時間位歩く計算になる。大した登りはないので雪がなければ5時間程度か。雪があっても8時間位か。上手く行けば14:30丹波発の奥多摩行きのバスに乗れるはずだ。

今日は朝からMicro Spikeを装着する。着脱が楽。これに尽きる。色味も綺麗だしね。

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まずはakiraさんのクフキューベンに向かって今日の予定を聞気に行く。Leeの肉球が良くなってればよいなぁ。でも無理しないで石尾根降りた方が良いかもね。

RIMG1309あかん。ぜんぜん眠れんかったわ。

Leeは夜中に痛くて鳴いたらしい。大丈夫か?犬はしゃべれないから辛いよね。akiraさんも迷っている風だ。一応、僕達のルートを再度伝えて先行する事にする。様子を見て後を追うかも、との事だ。そうか。無理すんなよ、Lee。それじゃ、akiraさん。

7:10、僕達3人はakira&Leeを雲取山荘に残して日の当たらない森林の中を進む。まずは雲取山の頂だ。

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山頂に登ると空の雲は比較的多めだけど足下には雲海も見られて美しい。

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冬のキリっ、とした空気が心地良い。そして自画撮りでテンション上がっているtiyoさん発見。

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長居は無用。西へと下るトレイルを見つけた僕らはそこになだれ込んだ。

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8:07三条ダルミ。 急坂のアイスバーンに手を焼いたが問題なく通過。ただ吹き溜まりで足を踏み抜く回数が増えてきた。三条ダルミから膝下程度の1人分のラッセル後を辿る。人より鹿の足跡が多い。

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狼平を過ぎた辺りから徐々に歩くペースが落ちてきた。

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ここで大きな甲羅を背負った3匹のタートルにウサギではなく1人と1匹のAkira&Leeが追いてきた。歩みが早い。そしてここから4人と1匹で歩き始めるもAkira&Leeについて行けず徐々に隊列は長く伸びていった。 ”jackieさん、気にしないで先行って良いですよ。ウチら後から追いますから” tiyoさんは相方を気遣いペースを落とす事にした様だ。個人装備のソロハイカーだ。自分のペースで歩けば良い。飛龍権現で待てば良いのだ。ここで僕らの隊列は3つに分散する事になった。僕は少し離れていたtiyoさん達に手でOKサインを出して先に進む事にした。

北天ノタル近辺。ここら辺からメモや写真を撮る余裕がなくなってきた。積雪がやばくなってきた。

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ラッセル跡に足を挿し入れてつつ前へ進む。自分の歩幅で歩けない事が体力を徐々に削っていく。さっきから息が苦しい。足を上げるのも億劫になる。先頭でラッセルなんて僕には絶対に無理だ。もうラッセル泥棒でもラッセル大統領でも何でも良い。好きに呼ぶがいい。僕は人様が付けた踏み跡を辿るのでもう精一杯だ。

意識を無にして歩いていると今朝、お粥を食べて以降、何も口にしていない事に気付く。急いでサコッシュからソイジョイ1本を取り出し摂取する。最近、2日目の朝食以降は行動食の分食で済ます事にしているので摂取のタイミングが重要になってくるのだ。

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少しでも身体への吸収を早める為、口の中でドロドロにして飲むようにして食べた。最後にトレイルミックスを2摘み口に放り込む。

1度緩めたペースを元に戻すのは大変だ。標高1900m前後の水平移動だけどたまに現れる登りが煩い。

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歩き続けて小さな岬を越えると露出した岩肌に寄りかかる様にしてお父さんハイカーが肩で息をしている。呼吸が荒い。身体から湧き上がる湯気の量が尋常じゃない。声を掛けると彼は言った。”三条ダルミでビバークして1人ラッセルしてここまで歩いてきたんだよ”。彼は苦しそうにグリベルのクランポンのベルトをゆっくりと締め直して再度口を開いた。”10分位前に背の高い犬を連れたハイカーにラッセルを変わってもらったから彼が今、先頭でラッセルしてるはず”。

Akiraさんだ!Akira&Leeだ。今、彼らが先頭でラッセルをしているんだ。手負いのLeeを連れて。追いつかなきゃならない。お父さん、ラッセルありがとうございました。後に2人のハイカーがまだ来る事を告げ僕は先を急いだ。歩くペースを上げていく。このペースでどの位歩けるのだろう。40年近く生きていると自分の限界というものが分かってくる。まだ大丈夫だ。まだ行ける。既に息は苦しく足は悲鳴を挙げている。30分持ってくれれば良い。30分で追いつける気がする。これは直感だ。歩いていると吐き気がしてきた。口から内臓が飛び出しそうだ。苦しい。しかしペースは落とせない。長身で足の長いakiraさんのラッセルは歩幅が大きい。短足の自分は合わせるのに必至だ。途中、Leeの足跡を発見する。ん?全然足跡が雪面に沈んでいない。雪面を浮いて歩いている。これは忍びの歩き方に違いない。以前、小説で読んだことがある。時折、獣の気配を嗅ぎ取りトレイルを離れて一直線に走りだす。さすがは高尾の暴れ犬。風魔仕込みだ。僕はLeeに「山シャチ」の忍名を授ける事にした。

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どの位歩いただろうか。頼む。追いついてくれ。岬を越えて視界が広けた先に黒い大小の塊が目に止まった。Akira&Leeだ。追いついた!停滞しているAkira&Leeに声を掛ける。”胸まで埋まった時は焦ったよ”とAkiraさんは力なく笑った。僕も肩で息をしていたが口から出てきたのは内臓ではなくてこんな言葉だった。

”Akiraさん、ラッセル変わるよ。ここから俺が前に出る”

その言葉を理解したのかLeeが尾っぽをピンッと立てぺろりと鼻を濡らした。”OK!山シャチ。後は任せな”。なにしろラッセルなどは初めて経験だ。習うより慣れろ、だ。僕は休憩も摂らずにまっさらな雪面に向かってラッセルを始めた。

さっきまでラッセル泥棒と呼ばれてもいい、って思っていた。僕は2人の先行者のラッセルを盗んでいたのだ。いや、そうなのか。否、僕はラッセル跡を借りていたのだ。レンタルラッセルだ。借りたものは返さなければならない。これは男の沽券に関わる問題だ。借りたものは返す。僕は阿修羅になって前へ進むのだ。ラセッてラセッってラセり込むのだ。潰れたら潰れたで良い。後ろにはtiyoさん達がいる。ロケットペンシルの様に下から順繰りに変われば良い。潰れれば僕が弾けて落ちるまでだ。そうだ、俺の屍を越えて行けばよいのだ。

どの位ラッセルをしていたのだろうか。積雪の厳しいエリアは大方、akiraさんがラッセルしていた様で僕が変わってからは腰まで埋まる事は数回あったが胸まで埋まる事は無かった。初めてでも自然にキックステップを繰り出して下りでは踵から足を入れていく。途中、不明瞭なトレイルの確認で数回akiraさんを振り返ったりしながら前へ前へと足を運んだ。少し下った後に登り返すとミサカ尾根が近くに見えてきた。 ”もうすぐだ” 僕は声を出して後ろを振り返った。そして数分後、僕らは飛龍権現で大の字になっていた。

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飛龍権現にtiyoさん達やお父さんハイカーも辿り着いた。時刻は確か13:30頃だったと記憶している。緊張から解き放たれた為にみんな笑顔だ。山シャチこと、Leeもラスト1本の骨っ子をご褒美で貰いご機嫌だ。トラバースしながらの斜面ラッセル。危険な箇所も数カ所あったが歩き通せた。この後、緊張を強いられるエリアは前飛竜の下りだけだ。その先は竿裏峠から丹波天平と歩きやすいトレイルが待っている。17時までに下山出来れば良い。

RIMG1365殆どウチのakiraがラッセルしたけどね。

後半に向けて1本満足をテルモスの白湯で流しこんだ。

ここで昼食を摂るtiyoさん達と別れてAkira&Leeと僕は下山を始めた。ほんじゃね。

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前飛竜の下りに手を焼きながらも尾根伝いに高度を下げていく。まだまだ先は遠い。

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竿裏峠。ここでtiyoさん達が追いついてきた。ここでのめこい湯に向かうtiyoさんとはルートを分かつ。僕たちは丹波天平を抜けて親川へ。ありがとう。楽しかったぜ!

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丹波天平。サクサク歩けるのでakiraさんと歓談しながら歩く。もちろんLeeも一緒だ。

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それから僕らは親川に降り立ち駐車場のある鴨沢まで歩いて行った。途中、Leeがモンキーにからかわれたりしながら。駐車場に止めてあった車に乗り込み駅に向かう。

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”akiraさん、雪山はもうお腹いっぱい?”

”うん、そうかな。jackieさんは?でも下山して時間が経つとまた歩きたいって思うかも”

”いきなりワカン買っちゃたりしてw”

”そうそうw本当に買おうかな。”

奥多摩駅でAkiraさんとLeeと別れた。初めてのラッセル。雪上幕営・・・。すでに次は何処に行こうか考えている僕がいる。決めた。今度のHiker's Partyでみんなに再開した時にもう一度同じ質問をしてみようと思う。

 

”ねぇ、雪山はもうお腹いっぱい?”

 

なんて答えるだろう。僕は今からみんなとの答え合わせが楽しみで仕方ないのだ。

 

 

Akiraさんはいつも相棒のLeeと山を歩く。LeeはAkiraさんの後ろを歩くのが大好きだ。Akiraさんの後ろをLeeが歩く。

そしてLeeの後ろを僕が歩く。僕はAkiraさんとLeeの後を歩くのが大好きだ・・・

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Leon Russell / Ballad Of Mad Dogs And Englishmen

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コメント

どうも。執筆お疲れ様でした。
鮮明に思い出しながら3部作楽しませてもらいました。

では、三鷹にて答え合わせいたしましょう。

お腹一杯になってもちょっとすればまた腹が減る
喉元過ぎて熱さ忘れるですね
私も既にバフバフと雪にまみれたくなりましたよ!!

奥多摩の積雪量も増えてきましたね!!
これからは奥多摩&奥秩父かな・・・

ところで寝具ですが
タイベックに太刀魚マットで寒くはありませんか?
何度位まで冷え込んだのでしょうか・・・

tiyodentimanさん、どうもです。

雪山の通過儀礼を無事終える事が出来ました。
これであと2ヶ月は楽しめそうですね。
今度は甲武信ですかね。
黒百合ヒュッテ辺りもよいなぁ。

三鷹で答え合わせですか?
もう分かってますよねw

samantha802先輩、どうもです。

ラッセルの大変さを身を持って体感してきました。
一人じゃ撤収確実でしたね。
心が折れてますよ。

>私も既にバフバフと雪にまみれたくなりましたよ!!
どうぞどうぞ。ご一緒した時の一番槍はお譲りいたしますねw

寒くないですよ、っていうか外気温-10℃で幕内-6℃くらいですから。
生意気にも寝袋だけは良いの持ってるからですかね。
-20℃を体感してみたいです。戦えそうな気がするんだけどなぁ。
甘いですかね。

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