2011.0409.10 奥多摩Deep South 笹尾根歩き3 (三頭山から高尾山)
2日目 浅間峠~生藤山~陣馬山~景信山~高尾山
目が覚めてから結構な時間、朝の匂いを嗅ぎながらぼんやりと過ごした。対面のバダさんはまだ眠っているようだ。起こさないようにそろりと起きだして鍋に水を張る。トランギアに入れるアルコールは1/2oz。沸騰させるには少ない量だが火が消える頃には80℃程度のお湯が出来上がる算段だ。わざわざボイルさせる必要もない場面もあるのだ。これは三鷹の店主から教わった事だ。これはエネルギーの基本的な使い方だ、とも。それは山でも街でも同じ事。過剰にエネルギーを使い過ぎるのだ。熱くて飲めなければ飲みやすい温度で止めれば良いのだ。出来上がった微温の紅茶を啜りながら昨夜のやり取りを思い出す。今日は高尾山まで歩く。そしてその前に@Hrk_55 の待つ陣馬山に行かなくちゃならない。
地図に目を落としてコースタイムを確認しているとバダさんが既に片付けを始めていた。
バダさん、一体いつの間に起きたんだい?
相変わらず手際が良くあっという間にパッキングを済ませる。聞くと朝まで爆睡だったそうな。さすが繊細さと豪快さを同時に有するバダさんだ。しかしだらだらと準備する僕に引っ張られる形でお互いの出発は6時頃になってしまった。
”三頭山の下り北側斜面が短いけどアイスバーンになっていて厄介だぜ。クランポンは持っているかい?無いなら貸すぜ”
”OK、スパイダーは持ってきている。そのエリアに行ったら時は迷わず使わせてもらうよ”
僕は高尾山を目指す。バダさんは三頭山を越えて奥多摩湖を目指す。奥多摩に向かうルートは高度を徐々に上げていくなかなかしぶといトレイルだ。昨夜、バダさんは2度目の挑戦だと言った。前回は時間がなく三頭山から泣く泣く都民の森に下りたという。今日は天気も回復する。バダさんなら奥多摩湖まで下りれるだろう。一晩の雨宿りで一夜を共にしたが目指す場所は正反対だ。お互い無事に下山したのなら三鷹の道具屋で落ち合おう、と約束をして別れた。
少し出発を遅らせちゃったかな。ふと気になり振り返えりバダさんの姿を探したがそこにはただ霧を湛えた浅間峠のあづま屋がぽつんと立っているだけだった。
バダさん、飛ばしてるなぁ。僕も負けずに高尾に続くトレイルを探し歩き始めた。時計を見ると6:11。@Hrk_55 の待つ陣馬山まで約3時間。濃霧に包まれた森を歩く。
一刻、行動する事を躊躇する程の濃霧に包まれる。
『その時まで彼は、こんなに深い霧を経験したことがなかった。
周囲のもの総てが、厚くたれこめたミルク色に鎖され、
深海の光景のようにどんより沈みこんでいる、こんな霧を。』 竹本健治「匣の中の失楽」より
幾つかの小さな峠や山を越えて生藤山に到着。地図上では奥多摩圏最南端と想い巡らせていたが実際にその場に立ってみるとここは奥多摩圏内ではない。森が違うのだ。濃霧で展望もなく地味な山頂でルートを確認、練乳チューブに吸い付く。
生藤山を過ぎた辺りから霧が晴れてきた。しかしそれ以降の山頂は踏まず巻き道と使い陣場山への道を急いだ。
途中、舗装された林道に下ろされた所が和田峠。笹尾根はここが終点かな。
陣馬山は茶屋横の階段を登っていけばすぐだ。待っててくれてるかな?@Hrk_55。
山頂近くのフラットに上がって辺りを見渡すと山頂で手を振る@Hrk_55の姿が目に入った。
”ジャキさん、お疲れさん。本当に歩いてきたよw”
”いやぁ、歩いたよ。俺やったよ”
熱い抱擁するほどの付き合いでもないのでそこはサラリと握手で祝福。
”ジャキさんに珈琲を飲んでもらいたくて一式背負ってきましたよ”
本当に?それは有難い。可愛いところあるじゃない。それにしても結構人いるんだなぁ。
”あの、せっかくだけど、となりの山で珈琲にしない?”
友人の好意に注文を付けてそのまま二人で景信山までハイクすることにした。流石に奥多摩DeepSouthから比べると奥高尾はかなりの都会だ。人の多さに驚く。しかしトレイルは歩きやすく会話をしながらのハイキングなのであっという間に(道間違いしたけど)景信山に到着。
ここまで来るとアルコールを計って食事の用意するのは野暮ってなもんで郷に入れば何とやらで売店の誘惑に負けて名物の「なめこうどん」を捕食。渇いた喉に汁物は旨い。それに昨夜のバダさんの味噌仕立て温麺が気になっていたので味噌うどんは、ばっちこいだ。
ずずずっと、うどんを啜っていると何やら餅つきを始めたグループが居る。この山頂で?などと思っていたら売店で道具一式と蒸かした餅米を用意してくれるそうだ。”良かったら搗き立てですよ。どうぞ”とお裾分けを頂いた。ありがとうございます。搗き立ての餅を葱と醤油で和えて頂く。旨いなぁ。ふわふわだ。
そして@Hrk_55はミルを取り出し豆を挽き丁寧にドリップを始めた。豆は博多の名店「美美」から取り寄せた逸品だという。彼は若い身空で旨いものをよく知っている。アロマが景信山の山頂に香る。
冒頭の写真にあるようにブラックを甘いウエハースで頂くとこれがまたよく合う。ありがとう、美味しかったです。なんかお餅といい「美美」の珈琲といい、みなさん、ありがとうございました。
ここからは高尾山までのんびりと歩く。城山を越えればゴールは目前だ。もちろん高尾山の頂上は巻かずに登頂。こんなに嬉しい高尾山登頂もないだろう。最後は稲荷山コースを下って遂に15:18東京トレイル奥多摩ルートを完歩。トレランの人たちは1日で走るコースだけれど僕にとっては長くてヘビーなトレイルだった。歩行時間は2日で約18時間。長かった。途中で@Hrk_55が迎えに来てくれて精神的にも大分助かった。それじゃ、三鷹に帰るか。
三鷹駅から直ぐの中華料理で乾杯。繊維質が足りないので肉野菜炒めと餃子を注文した。腹を満たした後、店の前で@Hrk_55とは別れた。わざわざ僕の晩飯に付き合う為だけに三鷹駅で降りてくれたのだ。最後まで本当にありがとう。
そして僕は@Hrk_55と別れた後、三鷹の道具屋に向かった。バダさんとの約束を守るために。何時頃になるかな。登りルートだから暗くなってからかな。遅くなってもよい。閉店まで彼を待つつもりだ。
店に入るとノートブックにかぶりつきで仕事中の店主が顔を上げて言った。
”jackieさん、バダさん、無事下山しましたよ。さっき電話ありました。今から三鷹に向かいます、と伝言ありましたよ!”
やったねバダさん。歩き通したんだ。
店を出てテラスの段差に腰を下ろしてバダさんを待つ。ミックがテラスの段差に腰掛けキースを待つThe Rolling StonesのPVのワンシーンのように。The Velvet Undergroundのルー・リードが待っていたのはヤクの売人だったけれども、僕は違う。僕は段差に腰掛けてただバダさんを待っているだけなのだ。
終わり。
Special thanks
@Hrk_55 Twitter Flickr
@hikerbirder (バダさん) Twitter Flickr
waiting on a friend /The Rolling Stones
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牛さんマークのチューブの『飲み物』、グビグビいっておられますねぇ~!
これは、もうマネさせていただきます!!(最初はちょっと、恥ずかしいかも。)
それにしても『高機動飲料』ですねぇ~(^^)
投稿: H.M.E | 2011年4月21日 (木) 06時24分
ブログ記事、大作になりましたね。
僕も何だかスゴイことをやり遂げたような気分です。
本当は屋根つき1泊なんですがw
GWは屋根のない道を歩いてみようと思います〜
投稿: hikerbirder | 2011年4月22日 (金) 23時42分
>高機動師匠、どうもです。
子供の頃、練乳は高級品でかけ過ぎると虫歯になるよ、と親に脅された
思い出があるので大人になった現在でも贅沢にチュウチュウ吸ってると
罪悪感を感じました。
素晴らしいのですが問題点は美味しくて止まらなくなる事かな。
1本130円程度ならコスパ的にも高機動ですよね。
>hikerbirderさん、どうもです。
その節はどうもです。
バダさんは独りストイックに登りルートをハイクしてたと思いますが
僕はきのこうどんを食べたり珈琲を飲んだりとマッタリハイクを楽しんでおりました。
今度は是非、同じ方向に向かって一緒に歩きましょうね。
投稿: jackie | 2011年4月23日 (土) 21時34分