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2013年4月21日 (日)

2013.0414 ハセツネ30k参戦記

今シーズンを占う上でも大事な一戦。ハセツネ30K。

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”ジャキさん、そこ4時間台ですよ。速くないですか?”

 

”ここで行く。俺は本気で4時間台狙ってるんだ”

 
 

スターティング・グリッドに並びスタートを待つ。緊張感は無かった。頭の中ではゴールする自分の姿だけがスライド写真の様に映し出されている。

 

去年の鋸山でのレースを終えてからというもの故障続きで満足に走る事すら出来ない時期があった。シンスプリント。ランナーにはよくある故障らしい。本人のマネジメント次第で回復が早くも遅くもなる。自分は後者。無理をして更に酷くするスパイラル。馬鹿なランナーの典型だそうだ。本気で治療しようと1ヶ月の完全レストを試みたにも関わらず痛みが再発した時には馬鹿でも流石に堪えた。

 

”もう、俺は走れないんじゃないのか”

 

レースエントリーも消極的にならざるを得ないそんな状況下に於いてもハセツネ30kだけはエントリーをした。走る理由はただ一つ。

 

 

遠くでサイレンが鳴るのを聞いた。歓声が沸く。レースの始まりを告げる歓声だ。

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”刈寄山の渋滞で休めるのを見越して前半の林道はしっかり走りきる”

 

足が出来ているランナーはそうするべきであろう。しかし自分は自分なりの作戦を立てていた。前半の舗装された林道セクションは抑えて走り、後半のトレイルセクションに望みを掛ける。第二関門の篠窪峠から登った醍醐丸からの吊尾根を勝負のステージと決める。後半のトレイルセクションで全てを出し切る。後半に向けてスロットルを上げて行く作戦。舗装された林道が長い、などの不満の声を聞いた事があるが、そう考えるとハセツネ30k。良いコースじゃないか。

 

スタート会場の声援の中にROD!!メンバーの声を聞いた。しかし口から中々言葉が出てこない。何とか目礼で答えたつもりだが、声が出せない程の興奮と緊張感は初めての経験だった。

 

何はともあれレースは今、始まった。

 

スタート直後のハイペースで進む檜原街道を僕は自分のペースでクルーズする。背後から抜いて行くランナーの邪魔にならないよう、かなりタイトにガードレールに付いて走る。その抜いて行くランナーの中に同じROD!!所属のMarz君を見た。一言二言の言葉を交わし僕を抜いて行った彼に付いて行くか否か一瞬迷ったが踏みとどまる。My Game。これは俺のゲームなのだ。

生活道路の賑わいを見せる檜原街道を左折して沢度橋を渡るとハセツネトレイルの一端でもある戸倉三山が目の前に広がっている。”これはロードレースでは無い。トレイルレースなのだ” と思わせてくれる最高な瞬間。そう思うと興奮してくるのはハイカーだからなのか。

レースは沢度橋を渡り秋川の支流である刈寄沢沿いの林道に入って行く。半舗装されたこの林道は緩やかに、時に苦しく勾配を繰り返す。ここまで来てやっとレースが落ち着き始めてきた。長い登りに歩き出すランナーや軽快なステップを刻みつつ登りも走って行くランナー。各自のペースが出てくる時、その時こそが本当のスタートだ。

 

その長い登りに音を上げて歩き始めた時に背後から声を掛けられた。ROD!!のニゴーだ。彼の、その故障がちなランスタイルから僕と同じく「ランオアダイのダイ組」と称される一人だ。彼もかなり長い間、故障と戦っていたがフォーム改造に取り組み、その問題を克服して今日のスタートラインに立ったのだ。

「仲間」と書いて「最高のライバル」と読む。これはROD!!の団訓の一つである。レース直前に”仲間”であるニゴーからランニングフォームについてちょっとしたアドバイスを貰い楽になった事があった。しかし、軽快なビートを刻みつつ、走り抜いて行ったニゴーのその背中には”最高のライバル”の文字が書かれていた。

遠くなるニゴーの姿を見ながらも自分のペースは崩さない。登りの歩きでスポーツ羊羹を腹に入れる。先手先手でエネルギーを入れて行く。途中で檜原街道で抜いて行ったMarz君に追い付く。”回りのハイペースに飲まれるなよ”とだけ声を掛けて別れた。

攻めの歩き。ハイカー必殺のパワーハイクで登り歩く、歩く。しかし少しでも傾斜が緩まればその5m手前から走りだす。そして勾配が続くようなら勇気をもって、歩く。まだレースは始まったばかりだ。

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これから向かう刈寄山のルートに於いて今年からコース変更があった。渋滞緩和の為にトレイルヘッド手前から採石場の広いトレイルで標高を稼ぎ刈寄山の真北から登って行くコースになったのだ。

しかしこのコース変更はトップ集団には有利に働きもするが中盤以降のランナーにとっては鬼門になった。一人づつロープを掴み直登するそのセクションは出走者1000人を超すレースに於いては大渋滞を引き起こす。30分弱の停滞を強いられ振り返ると最後尾までが視界に収める事が出来た。事実、隣にいた去年も走ったランナーが”去年の渋滞の方がマシ”と言っていた。しかしこれがハセツネ。前から言われていた事。渋滞を見越したレースマネジメントが問われる。この経験は生かさなければならない。

渋滞の先30m程だろうか。ロープを使わず急登を軽快に駈け登るニゴーが見えた。自分との間には50人程いるだろうか。いやもっとか。”マイゲーム”なんて呑気に走っている内に大分離されたようだ。

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渋滞を抜け刈寄山を越えると第一関門の入山峠だ。ここでROD!!メンバーが待機してくれて声援を掛けてくれた。

OK!ゴールで待ってろよ!

第二関門までの単調で長い舗装された林道。前半は緩やかに下り、後半は嫌らしく登っていく。ここからは如何に消耗せずトレイルセクションまで足を持たせるか。それに掛かっている。渋滞という不安定要素のない第一関門からのレースマネジメント。これが結果を大きく左右するはずだ。

 

この辺りで集団が形成され始めた。何組かの集団に置いて行かれながらも何とかフィットする集団を見つけて付いて行く。舗装された林道。故にペースが速い。守りに入るとすぐさま置いて行かれそうな展開に少しペースを合わせる。少し速いか?やばいな、やばいな、なんて思いながらも釣られて走る。時には流れに漂うのも悪くないのだ。

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長く単調な林道を走り終えて第二関門に到着。急いでトイレに並ぶ。さっきまで”小”のやつばかりで回転が速かった癖に自分の前になると”大”が増える。トレランあるあるのひとつ。

このトイレ停滞は林道での頑張りをどれだけ消費してしまうのだろう、と焦りながら用を済ませる。第二関門の人ごみを掻き分けて急いで登山口の急登に取り付く。太ももが悲鳴を上げるまで駆け上がる。

トレイルセクションを前にして何故焦っているのか。いや、焦っているのではない。実は第二関門に到達した丁度その時、篠窪峠の直登を軽快に駈け登るニゴーの後ろ姿をしっかりと目撃していたのだ。

 

第二関門から第三関門の間。ここからがマウンテンランナーの本領発揮。醍醐丸までの登りをパワーハイクで登る、登る。荒い呼吸に振り返った前のランナー達が道を譲ってくれる。登りで抜く。歩いて抜く。走力の低い自分が戦えるステージは此処しかないのだ。このレースの最高標高点である醍醐丸を登り終えると今度は吊尾根を一気に下るローラーコースター。おっかなびっくり下るランナーに声を掛けて抜き下る。スポルティバのクロスライトの限界は分かっている。そのフリクションが効く限界のスピードまで駆ける。

小ピークで形成される休憩集団には目もくれず走る。ここで走る為にロードセクションを抑えていたのだ。とにかく吊尾根を駆ける。荒い呼吸音の前にランナーが道を開ける。何組かの集団を躱して先頭に出ては次の集団を追いかける。そんな展開を繰り返していくと巡航速度の速い集団に追い付いた。その時、集団の先頭を軽快にひた駆けるニゴーの姿を視界に捉えた。

遂にニゴーに追い付いた。ペースを上げその集団の最後尾に付く。1人ずつ躱し前へと出る。そして先頭を行くニゴーの後に付いた。声を掛けようかどうか迷ったが、結局声は掛けなかった。ニゴーの後ろ、3mほど距離を置いた。ニゴーは気付いているのかどうか。抜く所は下りしかない。次の下りが来たらそこで一気に仕掛ける。彼の背中に見える”最高のライバル”と書かれた文字が一瞬光った。その時、熊笹の茂るシングルトラックの前方が見切れて落ちていた。

 

下りだ。

 

下りに入る少し手前。一気にアクセルを噴かす。ニゴーの脇を抜けて前に出る。リミットを少し超えた速度で突っ込む。大きなストライドで岩を躱す。トレイルから外れそうになるのを木の幹を掴みトレイルに留まる。下る。一気に下る。クロスライトが滑り出す。つま先着地。ハイカーの基本。つま先が滑っても踵で止める。アウトソール全面のフリクション。スピードに乗る。”ニゴー、追いかけてくるなよ!”太腿筋が悲鳴を上げる。走る。”付いてくるなニゴー!”心拍が速い。呼吸が苦しくなってくる。それでも走る。フラットなトレイルに出た。心臓が口から飛び出す。それでも駆ける。”ニゴー、頼むから付いてくるなよ!”苦しい。振り返る余裕もなく目の前の勾配を駆け上がる。前の集団がトレイルを譲る。前に出る・・・

以前、鋸山のレースでの事。残り3km地点で同じROD!!のヤスヨちゃんにぶち抜かれて追う気力がなくなった、とROD!!のテクニカルアドバイザーでもある夜明けのランブラーに話した事があった。彼は言った。

 

”いいかジャッキーボーイ。良く聞きな!相手を抜くときは圧倒的な速さで抜くんだ。あの速さじゃ追い付けねぇ、って相手が戦意喪失するくらい圧倒的にな!いいか?生半可に抜いたらやられる。抜くときは苦しくても覚悟を決めて圧倒的に抜かなきゃ、殺られる”

 

登りを駆け上がり限界点に近づいた時、恐る恐る後ろを振り返った。そこにはニゴーの姿どころか他のランナーの姿すら見当たらなかった。

逃げ切れた、のか?

このランでペースが掴めたのかそれ以降はかなり気持ちよくレースにフィットしてきている自分を感じていた。このペースでなら4時間台を狙えるか。そんな余裕を見透かされたか市道山の切り返しを過ぎて峰見尾根に入った時、サロモンを背負いスポルティバを履いた長身のランナーに抜かれた。確かに少しペースは落ちてきていた。しかし吊尾根に入ってから初めて抜かされたランナーだ。ここで再びハートに火が着いた。長身のサロモンに離されないように追いかける。二人のバトルに前を行くランナーが道を譲る。追う側の強みで追いかけて行く。俺は絶対に離されないし付いて行く。何としてでも。心の中で思う。

”抜くときは圧倒的に抜かなきゃダメなんだ”

第三関門手間の小ピークで長身サロモンとのバトルを制して前に出た。最高に気持ちの良い展開だ。4時間台が見えてきた。入山峠に降り立ち第三関門を通過。ここから今熊神社までは下り基調のトレイル。ここを走り切るか切らないかで結果は大きく変わってくる。まだ行ける、と思った時、右のふくらはぎに軽い痙攣を覚えた。瞬時に力を抜き事なきを得たがペースを落とさざるを得ない。再び走り始めると今度は左足のふくらはぎが。頼む。あと少しなんだ。持ってくれ。足を攣った経験があまりなく対処方もままならない。ROD!!の攣り王子、ことヒラドンに聞いておけば良かったと思ったが後の祭り。恐怖心に苛まれながらも走り始めたがスピードを上げると違和感を感じる。

ペースが落ちてきた所を峰三尾根のバトルでお馴染みのライバル、長身のサロモンが抜いて行った。サロモンだけじゃない。青サンバイザーやゲルフジにも抜かれていく。足が攣る原因は塩分や水分不足も一因とされているらしい。試走の時は1.7L水を消費したが今回は800cc程度しか消費していない。エネルギーは十分に摂取していたが水分までは頭が回らなかった。これは自分のミス。トップ選手はそこら辺のレースマネジメントも上手く熟しているはず。

しかしあと3kmもある。それにしても弱気になると一気に疲れがやってくる。なんでもそうだが弱みを見せてはいけないのだ。事に戦いの時は。重い足を何とか持ち上げて今熊神社の参道に入った。

”ジャキさん!あと少し。ガンバですよ!”

ROD!!のハギーがビデオカメラを回しながら手を振っている。声が出ない。親指を立てて答える。声援とビデオカメラが回っている事にモチベーションが上がり再び走り始める。なあに、あと少し走れば終わりだ。思う存分休めばいい。攣ったら攣ったで片足で走るまでよ。人の声援は弱気を打ち消してくれる。弱気が消えると足の重さが消えた。今熊神社の脇を抜けてゴールまでの下り。あと少し。まだ行ける。ペースを緩めるなよ。走れ。

途中でROD!!の入山応援組にすれ違う。

”ジャキだ!思ったより早いじゃねーか!”

当たり前だ。4時間台まであと少しなんだ、と時計を見たが既に4時間切りは無理な時間になっていた。しかしそんな事はもうどうでも良い。どうでも良いのだ。とにかく走るんだ。足を止めるな。まだ行ける。

森を抜けて変電所にブチ当たる。アスファルトに出た途端に足が動かなくなる。前に進まない。なんだこの足の重さは?

”ジャキさん、あと少し!ガンバ!”

併走してくれている仲間が声を掛ける。

その時、鋸山のレース、制限時間ギリギリで帰ってきた友人の走りが頭の中に浮かんだ。腕を大きく前に振る。前に前にと腕を振ってゴールに帰ってきた。その時の友人の走りをトレースしている自分がいる。

 

もう少しでゴールだ。もう終わりか?まだ走れるぞ。まだ行ける。俺はまだまだだ。

 

前の方から歓声が聞こえてきた。広徳寺へと続く石畳の上をゴール目指して走る。併走してくれた友人がスピードを上げてあっという間に抜いて行く。ゴールに先回りするつもりだな。

ちょっと待てよ。こっちは全速力で走っているんだぜ。アイツが速いのか。それとも俺がめちゃめちゃ遅いのか?

足が重い。大した言のない石畳の段差に躓きそうになる。 

腕を大きく前に振る。前に前にと腕を振れ。

 

”ジャキさん、お帰りなさい!” 

 

その時、視界の先が明るくなった。

 

あぁ、帰ってきた。

もう走らなくて良いんだ・・・

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ハセツネ30K

順位  : 570位 (570位/1193人中)

時間  : 5時間8分8秒 

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ご声援ありがとうございました。皆の元気をもらい夢の様な5時間8分8秒を過ごす事ができました。順位もタイムも満足している訳じゃないです。それでも自分なりに満足できるレースでした。

 

まだレースが終わったばかりだけれども、秋になったらまた此処に戻って来ます。

 

再びこの地を走る為に。

 

ROD!!

 

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おわり。

 

ヤハギくんありがとう!


                                                                  Movie:Kenichi Yahagi

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コメント

いつもブログを参考にさせてもらってます。今年のハセツネ30kのスタート地点でお見かけしたのですがお互い無事、完走できたようですね。お互いおつかれささまでした。自分も登山からトレランにはいったのでジャッキーさんのブログ記事にはとても共感を覚えます。われわれハイカーは走れないほどの傾斜のパワーハイクは勝負どころですよね、ああいうセクションで燃える気持ちすごい共感します!今後もトレラン、myogなどの投稿を楽しみ にしてます。

cappさん、初めまして。

ハセツネ30kお疲れ様でした。
そうですよ、僕らハイカーが登りで歩き負けちゃダメです!(いつも負けてますけど)
そこはハイカーのステージですからね。

また今度もどこかのレース会場でお会いしましょう。

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